雨のち晴
9話 ◆受け入れてほしい
それから月日が経って。
いつの間にか2年の5月過ぎ。
初めは十夜くん。
だけど2年になる前に、
十夜って呼びたいって言い出す始末。
ついでに俺にも、
里菜って呼んでと、強制される。
いやいやだけど、里菜って呼ぶ。
何だろう、俺。
名前を呼んで、朱里と重ねようとしてんのか。
あれから里菜にキスしてから今日まで、
里菜とキスをしたのは3回。
俺も男なわけで。
そういう欲求はなきにしもあらずで。
けど、里菜にキスをしてるつもりはなく、
唇を借りて朱里にキスしてる
感覚でいる俺。
どこまで気持ち悪いんだ、と。
自嘲しつつも、
そうでもしないとやってけねーと。
言い続ける俺。
「チームでバトン練習~」
ある日の体育の時間。
リレーをするらしく、
勝手に分けられたチームで練習。
俺ははっきり言って、
走ることは得意だから、
体育は好き。
運動して、日ごろのストレスを発散。
バトンパスの練習をしながら、
ふと横を見る。
グラウンドから見える保健室に、
フジ子と朱里の姿があって。
てか、何してんだあいつ。
今完全に授業中だろ、おい。
俺はそんなことを考えながら、
練習を続ける。
それがいけなかったのか。
パスミス、しかも足が絡まって。
普通にこけてしまった。
「保健室行って来い」
先生のその一言に、にやり。
さんきゅ、先生。
待ってました。
俺は痛む肘をぶら下げて、
保健室に向かう。
朱里がいることが分かってるからか、
気分か軽い。
ていうか、ノリノリ?