雨のち晴




あたしが手当てする、とか。


言いやがる。


いやいや、いいって。


ここは1つ、遠慮しとくわ。


ばかじゃねーの、まじで。


普通に考えて、怖いから。


なんて思う反面。


早くやれよって。


強気な俺もいて。






「染みるけど…我慢してね?」






「…ん、っつ…痛ぇ」





水で、しかもごしごし洗われて。


俺は目をぎゅっと瞑る。


仕方ねえだろ、こんなもん。


痛すぎるし、へたすぎる。


けど、朱里だから。


いいか、なんて甘い俺。





「はい、おしまい」






その言葉と同時に、


傷口をポンと叩く朱里。


お前の神経、


どうかしてるわ、絶対。


まあ、いいか。


ほっとくよりましだったし。







「あ、そうだ。こないだジュースありがとうね」





恥ずかしそうに、


下を向いてそう言う朱里。


お前、いつもいつも。


反則だろって。







「別に。忘れてた」





冷たく言う。


っていっても、本当は


自分を抑えすぎで


冷たくなるわけで。


本当は、笑ってやりたいけど。


やっぱそれは、俺じゃなくて。









「十夜…さ、」






突然ぽつり、と。


そう言って言葉を止める朱里。


俺はその沈黙が怖くて。


怖くて怖くて。








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