雨のち晴






「悪ぃ、寝かせて」



俺はそれだけ告げて、


その場に横になる。


何か今日はもう、


いい気がして。


許してくれる気さえして、


勝手に朱里の膝に頭を乗せる。


温けえ。


そう思ってるうちに、


朱里の声が遠くなってて。


何も聞こえなくなって、


夢の中。


どんだけ寝たのか、


知んねーけど。


いい夢、見せてもらったわ。


朱里が、俺に。


ずっと好きだったんだよ。


知らなかったでしょ?


そう言って、笑いながら泣く。


俺は。


おせーよ。なんて言ってて。


抱き締めようとしたら。


チャイムの音に起こされた。


くそ、タイミング考えて鳴れ。


なんて、無理なことを思って、


寝返りを打つ。


痛い、体。


てか、肘怪我してんだった。


なんて思って、薄ら目を開ける。





「十夜?チャイム、鳴ったよ?」




声を聞きとって、


俺は。


行くなって思って。


目の前のスカートを握った。


いや、これはただ単に


引っ張るものがスカートしか


なかったからで。


別に見ようとかそんなんじゃなくて。


まじでまじで、行かせたくなかった。


ただの俺の願望。


だけどそれを察してか、


動こうとしない朱里。


何だ、それ。


さっきのまさか現実?


夢じゃなかったりして。






「ちょっと、起き…」




なわけねーな、ごめん。


1人で謝って、


スカートを握る手を緩める。


すると朱里はいきなり慌てた様子で


わなわなし始める。


何、なにごと?





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