雨のち晴
黄色いハチマキを首に巻く。
トイレに行くから待ってて。
そう言う里菜を、
平気で残して先に行く。
体育祭だってのに、
こんな時まで里菜と一緒は、
勘弁してほしい。
「お」
グラウンドに向かう途中。
会いたかったやつを見つけて、
思わず声が漏れる。
何出るの?
そう聞いたら朱里は。
恥ずかしそうに、
騎馬戦って答えた。
冗談言ってんのか?
お前が、騎馬戦て。
絶対間違えだろ、それ。
俺はおかしくて爆笑。
「何…で、笑うの!」
「似合ってる。すっごい、騎馬戦て感じ」
悪態を吐いて、笑う。
困っている様子が、
可愛くて。
可愛くて。
「十夜ぁ!遅くなってごめん!」
そこに走って来る里菜。
あ~、何だって邪魔すんだよ。
ったく。
俺は気まずそうに去る朱里に、
行くなって言いかけて。
「朱里」
里菜なんか構うもんか。
俺は思わず、感情を向き出して
朱里の名を呼んで。
「頑張れな」
そう言い残して去る。
本当はもっと話したいけど。
まあ、仕方ねえか。
「十夜」
隣を歩く里菜は、俺を睨んで。
「どういうつもり?」
「は?何が?」
疲れる。
こいつ、疲れる。
あ~、やりきれねえ。
「だから、高原さっ…」
「黙って、まじで。朝からきつい」