雨のち晴
だけど、
夏休みが明けたら。
「…、朱里?」
十夜には、彼女が出来ていた。
本当に突然で。
あたしはひたすら放心状態。
なのにまだ好きなのは、
何でなんだろう。
「…えっ!?」
お昼の途中。
食べながら十夜を好きに
なってたころを思い出していた
あたしは2人の会話を
ほとんど聞いていなかった。
「ごめん…、ちょっと夏休みの時のこと、考えてた」
「あー、去年の?」
うん、と頷くと
懐かしいねと返ってくる。
「朱里、ほとんど遊べなかったもんね」
あの頃、何度も2人から
連絡があったけど、
遊べたのはほんの数回。
「だって、何回もテストやり直しでさ…」
大変だったんだよ、と付け加えた時。
「おい」
と、頭上で声がする。
聞き慣れた声に体が反応し、
後ろを振り向くと十夜がいた。
「え…何?」
いつも一緒にいる彼女を
入り口で待たせて、本人1人。
「やるよ」
あたしの頭の上に
何か冷たいものを乗せられ、
咄嗟にそれを自分の手で掴む。
「じゃあな」
頭の上に乗せられた何かと、
自分の手を下ろすことなく、
十夜の後ろ姿を見送る。