雨のち晴
ゴールすると、手に輪っかを付けられ。
フィールドから出て、すぐちぎった。
ぐちゃぐちゃに丸めて。
そこらへんに捨ててやった。
「出てくれて嬉しかった」
そう言う里菜に、まじで寒気。
「まじでお前のためじゃないから」
着いてくんな、あっち行け。
俺は今から、リレーなんだから。
朱里のために、
走んなきゃいけねーんだから。
絶対1位になってやる。
で、俺がすごかったって。
朱里の口から言わせてやる。
俺はそう思って、走った。
俺に回って来た時点で2位。
だけど俺が走って抜かして1位。
楽勝、こんなもん。
朱里のためとか思ったら。
余計に楽勝。
走り終えて、すぐ閉会式。
俺は半分も話を聞いてなくて、
疲れてあくびばかり。
テントの片付けまで残ってて。
仕方なくテントに戻ると、
隣でうるせえやつが騒いでて。
「悔しい~っ!!!」
中山が顔を真っ赤にして、
さっきのリレーのことを
悔しがっている。
俺が抜かしたの、
こいつらの色だっけ。
「でも藤田はさすがだね。負けなしだよね、あれじゃ」
お、石黒、分かってんじゃん。
俺は1人で気分がよくなって、
軽々と自分のイスを持つ。
さあ、朱里に俺の感想でも
聞きに行くか。
そこに聞こえた。
「んー、でも…そうでもないよ。恵衣の方が…」
って、朱里の声。
は?てめ。
それはねーだろ。
俺はイラっとして。
「んだと、こら。締めるぞ」
朱里の口を自らの手で塞いだ。
お前が言っていいのは。
俺のことだけ。
「あ、藤田!…じゃなかった、敵!敵!」
しっしっ、を俺を払う中山。
残念でした、俺が1番なの。
なぜか俺は、敵対視して。
ふっと笑ってしまった。
別にどうって感情はないけど。
意地悪いことしてやりたくなった。