雨のち晴
教室に着いて携帯を開くと。
鬼電と大量のメール。
相手はもう、見なくても分かる。
「…」
無言で電話をかけ返す。
何も言わない俺に。
『あ、十夜?今どこ?』
探るように声をかける。
見え見えなんですけど、
探ってるの。
それ、朱里といるの?って。
聞いてるようなもん。
「学校だけど」
『あたし近くで待ってるんだけど』
「あ、そ?別に帰ってくれればいいから」
待ってるって。
頼んでない。
もう俺は、
朱里のことしか頭にないし。
『え、でもせっかく待ってたんだし…』
「まだ帰れねえから、先帰って」
あーもう、着いてけねえ。
だだっこになりたい。
ごねてごねて、
朱里に抱きしめてほしい。
って、気持ち悪い。
『でも~…、会いたい』
もう嫌になって。
「だから無理。もう分かれって」
俺はぶちっと電話を切って、
電源を切る。
今日くらい、いいだろう。
朱里に溺れて、いいだろう。
そんなことを思って、
玄関に行き。
朱里を家まで送った。
足を気遣ってゆっくり歩く。
こんなに人に気を遣えるんだって、
驚くくらいで。
もう、隣にいる朱里が。
こんな俺でも許してくれねえかなって。
こんな俺でも受け入れてくれねえかなって。
そんなことが喉まで出かかって。
抑えることに必死で必死で、
会話なんかほとんど覚えてなくて。
でもただただ幸せ感じてたのは、
言うまでもない。