雨のち晴
10話 ◆甘い夢と、罰
気付けばテスト目前で。
結構俺焦ってて。
だって苦手な英語のノート、
寝すぎて取れてなくて。
全部ミミズが這ってるみたいな。
そんな仕上がりで。
どうしよう。
そう焦ってた時。
…朱里。
そう頭に出たのは、
ほんの数秒で。
家に帰ってもう寝る間際。
久々に、画面に朱里の名前を出して。
1回、2回、とコール音を聞く。
『もしもし』
受話器の向こうで聞こえた、
朱里の声が。
俺をくすぐる。
何してたんだろうとか。
当初の目的を忘れる。
「朱里のクラス、明日で英語のテスト終わるだろ?」
『うん…、終わるけど?』
「俺ら明後日なんだけど、授業中寝ててノート取ってなくて。貸してくれ」
懇願。
仕方ねえ。
俺のこの先がかかってる。
いいよ、と言う朱里。
俺はその一言で、
そういや1年の時もノート
借りたなって。
ふと思い出して。
そしたら何か安心して。
あくびが出た。
「眠いの?」
そんな俺を察してか、
ぽつりと呟く朱里。
『いや、今まで爆睡してたから。さすがにテスト前なのに、勉強しねえわけにはな』
そう、俺さっきまで寝てたから。
俺っていつもそうで。
テストって分かってても、
睡魔には勝てなくて。
でも結局起きて一応勉強する。
いいことなのか、悪いことなのか
微妙なとこだけど。
でも、まあ机に向かってて。