雨のち晴
その中に1人、
お目当てのやつがいて。
「藤田くん、すごい早いね~、走るの」
「はい…すごく、早いです」
リレーをしているのか、
赤や青のバトンを繋いで
走っている。
十夜が、アンカー。
誰よりも早くて、毎回アンカー。
あたしはこの瞬間を見たくて、
授業をサボってここに足を運ぶ。
先生は理解力があって、
仮病を使って
バレた時は怒られるかと思ったけど
真剣に相談に乗ってくれた。
こうやって仮病を使うことも、
誰にも内緒にしてくれる。
教師、失格だね。なんて笑いながら。
「あ、朱里ちゃん…あのね」
「はい?」
グラウンドに向けていた目を
先生に向けた。
先生の手にはたくさんの資料。
「私、仕事が出来たからここ離れるわね。…次はちゃんと授業出るのよ?」
「はーい!」
あたしの返事を確認すると、
先生は静かに保健室を出て行った。
すぐさま視線をグラウンドに戻し、
十夜を探した、んだけど。
どこを見ても十夜がいない。
あたしはがっくり肩を落とし、
仕方なく授業に戻ろうと立ち上がった。
そして、ドアの前に立った時。