雨のち晴





「ネックレス…?」




濃いめのピンクのプレートに、


あたしの名前のローマ字を、


白字で記されたもの。


すっごくすごく、可愛くて。





「たまにでいいから付け…」




「毎日付ける!学校でも、休みの日でも!」




先輩の言葉を遮って、


自分の気持ちを伝える。


嬉しくて、たまらない。


きっと、作ってくれたんだろうな。


あたしなんかのために、


手間をかけてくれたんだな。





「っとに、朱里は可愛すぎ」




「本当に、ありがとう。大切にする」





諒司先輩は、頷いて笑顔になる。


笑ってくれる。


それだけが嬉しい。






「あーもういいかなっ」





「え?」





「いや、言おうと思ってたんだけど。もういいかなって」





先輩はいきなり頭を抱えて、


しゃがみ込む。


あたしは一気に不安になって、


怖くなる。






「どうしたの?」





そう、恐る恐る聞いてみると。






「昨日、誰かと電話…してた?」





痛い痛い一言が、


あたしの胸を貫いた。


聞かれないと、いいなって。


甘いことを考えてた。





「昨日?」




とぼけることで精一杯で。


昨日、本当は。


十夜と。





「0時に電話したんだけど、話し中だったみたいで」





十夜と、電話を。





「と、友だち!小学校の時に仲良かった子が電話くれてっ…」





正直に、言えなかった。


隠すことなんてないのに。


本当のこと、言えばいいのに。


いけない嘘を、付いてしまった。





「全然いいんだ!今日こうして会えたんだし!」





「ごめんなさい」





笑って、あたしを許す。


傷付けたんじゃないかって。


こんなつもりじゃなかったのにって。





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