雨のち晴
12話 ◇本当の感情と現実
冬休みも何事もなく終わり、
高校2年の3学期が始まって数日。
新しく年が明けた時、
宣言通り十夜から
あけおめ電話がかかってきた。
丁度0時。
心置きなく電話出来たのは、
前の日から諒司先輩は
クラスの友だちたちと
年越しパーティーを
するから、連絡出来ないかも
しれないと言われてたから。
十夜の声が、耳に残ってる。
今年初めて聞いた人の声が、十夜。
あたしのたくさんの始まりが、
十夜で始まってる。
何か、変な感じ。
「ちょっと本返してくる」
「じゃあ先に玄関行ってるね!」
1月の終わりかけ。
冬本格的な今の時期。
最近ハマってることが、
地味に読書で。
月曜日に借りて、
金曜日に返す。
今日は本を返す日で、
あたしは1人図書室へ向かう。
放課後の図書室には、
委員の人もいないし、
生徒も見当たらない。
あたしは、この空間が好き。
1人で佇んでいるこの時が、
何も考えなくて落ち着く。
また月曜日に来よう。
あたしは返却カードに名前を残すと、
静かに図書室を出た。
さ、玄関行こう。
振り返ったそこに。
「わっ…十夜、」
「おー、何してんだ」
何も変わらない、十夜がいた。
とくんと、なってるあたし。
「本をね、返しに来たの」
「朱里が本?似合わねー」
意地悪な十夜。
何だろ、何か。
いいことでもあったのかな?
だって。
「何か、あったの?」
「は?」
いつもよりたくさん
笑う十夜に、
少し違和感。