雨のち晴
「でも、健先輩は?」
率直に問う。
あたし勝手に、
上手くいくと思ってたし。
「健は、本当諒司先輩に負けないくらい、いい人」
こんな所で話すことじゃないかな、
なんて笑いながら。
少し切なそうに、言う麗華。
「でも、あの人のこと、割り切れないんだよね」
「関根のどこが好きなの?」
「んー、どこだろ。言い切れないね」
こんな幸せそうな麗華を、
あたしは初めて見た。
遠くを見ながら、
たくさんの出来事を話す麗華は、
すごく綺麗だった。
確かに言われてみれば、
関根に何か言われても、
素直に聞いてたかもしれない。
関根もまんざらじゃない感じで。
麗華はすごく大人っぽいから、
並ぶとお似合いだったりもしてて。
そっか。そうだったんだ。
「告白とかしないの?」
「もうしたよ」
「えっ!本当?」
あっさり頷く麗華を、
あたしは掴みかかるように
身を乗り出す。
本当、何も知らなかったんだな。
「でも、いつもすれ違っても、普通じゃない?」
「ね。冷たい人なんだよ」
ね。って。
でも、悲しそうじゃない。
「もう、終わっちゃったの?」
聞いてから、無神経だなと思った。
もしそうだったら、
あたし最低だ。
だけど、意外な答えで。
「お前は生徒だからって言われた。だから卒業まで待つの」
「そっかぁ…」
もしかしたら、
あたしなんかよりも
辛い思いをしてきたのかもしれない。
なのに笑ってあたしのことを、
助けて来てくれたのかな。
あたしは何も気付けなかったのに、
それでもあたしでよかったのかな。