雨のち晴
驚いているあたしに、
十夜がちらっとこっち見て。
「関根かよ」
と、言った。
十夜もあたしも1年の時、
担任だったから知ってる。
この人の、人遣いの粗さを。
十夜はあたしよりも、
雑に扱われてて。
でも仲良しではある。
「この中で1年で担任した生徒もいるな。な、十夜」
「うっせえ」
「お、朱里もか。うん、よし」
よし、の意味が読めないまま、
HRが進んでいった。
早速、関根はあたしと十夜を前に呼び。
職員室まで配布する資料を
取りに来いと言われた。
「行くぞ」
「うん」
でも、嬉しさしかない。
十夜と2人でいられるなら。
職員室に向かいながら、
十夜と他愛もない話をする。
何を話すわけでもなくて。
恵衣がうるさいだとか。
関根が担任で最悪だとか。
あたしは全てが楽しくて、
行きも帰りもずっと笑っていた。
「今日は委員会だけ決めて帰るぞ」
入学式、始業式を終え、
教室に帰ると、
もう黒板に委員会の名前が
書き記されている。
関根は男のくせに字が上手い。
板書も綺麗で、見やすい。
だから、すぐに分かった。
「クラス委員はもう決めてあるからな~」
黒板の右に、
あたしと十夜の名前が書いてあること。
決めてあるからな~、じゃないわよ。
何、勝手に決めてんの。
「ふざけんな。勝手に決めてんじゃねーよ」
「何だ、十夜。そのやりたそうな顔は」
「んなんじゃ、ねーよ」
あの強気な十夜が、
関根にだけは負ける。
関根はなんやかんや言って、
生徒の扱い方が上手い。
だからあたしも、
いつもやられる。
「つーわけで、十夜と朱里は進行よろしく」
「まじ覚えてろよ」
十夜がぶつぶつ言いながら、
前に行ったので、
仕方なくあたしも前に行った。