雨のち晴
十夜のことは学年のみんなが知っていて、
結構支持もされている。
このクラスの中の男子も女子も、
知り合いみたいで。
それに引き替え、あたしは
そんな知らなくて少し控え目。
別に目立ちたくないし、
静かに生活したい。
なのに、そうもいかなくて。
「挙手制っつーことで。文句はこいつが聞くんで」
十夜はまとめだしたかと思えば、
いきなりあたしを指さして
にやりと笑う。
みんなはわいわい楽しそうに、
あたしの方を見て騒ぐ。
朱里ちゃんと名前を呼んだり。
文句言わせてもらうね、と
叫んだり。
始業式早々、うるさい
クラスとなってしまった。
「じゃあ、これで決まりってことで」
結局文句など出ず、
しっかり十夜がまとめてくれて
スムーズに終わってくれた。
関根も満足そうに頷き、
再び教壇に立つと。
「じゃあ今日は解散」
それだけ言って、
がははと笑って去って行った。
「じゃあな」
帰ろうと立ち上がった時。
わいわい楽しそうに通り過ぎて行く
男子の群れの中。
「わっ、」
くしゃくしゃと。
頭を撫でて通る十夜。
それを見ていた男子たちが。
「何!ちょっと!」
「朱里ちゃん、こいつとデキてんの?」
と、茶化してくる。
そうなるよね、だよね。
あたしはどうしたらいいか
分かんなくなって俯くと。
「ちげーよ、ばーか」
十夜が淡々と。
「丘谷さんのだよ、手出すなお前ら」
そう言って。
その一言によって、みんなが。
少し怯えたように見えた。
本当少しだけど。
ほんの少しだけど。
ショックだった。
「ご、ごめんね。朱里ちゃん」
「じゃ、またね」
みんながよそよそしく去って行く。
必死にみんなにばいばいと言うけど。
気持ちが、全く、追いつかない。
どうしたんだろう。
あたしは呆然となり、
再び席に座った。