雨のち晴
言葉にならない言葉を、
小さく呟きながら。
自分でも最低だと思ったけど、
本当に関係を切りたかったから。
それで最後に、勝手だけど、
あんな男たちと付き合ってほしく
ないと思ったから。
「俺とも関係なくなるけど。あいつらとも関係切れ」
「十夜…」
「それだけは、約束して」
俺はそれだけ言い残し、
ファミレスの店員に一言謝って、
店の外に出た。
一緒にいるから後から連絡して、
と言っていた輝たちに
済んだからと一応連絡を入れる。
勝手に俺はすっきりして。
だけどまだやることが残っていて。
「もしもし」
『あ、藤田くん…?』
人に聞いた丘谷の番号に発信。
今すぐに話さねーと
いけないから。
『…嘘だろ』
「咲坂が言ったんで、間違いないと思います」
混乱しているのか、
電話の向こうでぶつぶつ言っている。
「こっちは一応片付いたんで、そっちはそっちで頼みます」
『あぁ…分かった』
俺がやれることは、
これだけなのか。
まだあるんじゃないのか。
正しかったのか。
間違っているのか。
そんなことを考えながら、
俺は家に向かった。
カタをつけた、と
朱里に報告してやりたかった。
俺がお前の痛みを、
男たちに知らせてやったぞって。
だからもう、安心しろって。
本当はそう、言いたくて。
朱里のためにしたことでついた、
この頬の傷が。
朱里の苦しみの。
朱里の痛みの。
何分の1なんだろうか、と。
ぐるぐるそんなことを考えながら、
空を仰いだ。
ごめんな、朱里。
俺のせいで傷つけて。
こんな守り方しか出来なくて、
本当にごめん。
今でも朱里には、
謝ることしか出来ずに。
俺の心の中は黒いモヤで
包まれていた。