雨のち晴
「ふーじーた!」
後ろから聞こえる声を、
耳でキャッチする。
あれから時間が経ち、
もう3年生初日。
春休みは別に何もすることがなく、
だらだら過ごしていた。
休み明けに学校へ向かう途中、
ばかみたいに大きい声で
俺を呼ぶばか。
俺のことを暗いだの、なんだのって
罵る中山は相変わらず。
その隣にいる朱里も、石黒も、
楽しそうに笑っている。
この雰囲気が、
俺はたまらなく好きで。
「よりにもよって、何で藤田が朱里と一緒なのよ!」
クラス分けの表の前で、
そんなことを言う。
俺自身も信じられなかった。
朱里と同じクラスになれるなんて。
思わずぽかんと見上げてしまう。
「先行ってるぞ」
なんて、我が物顔で朱里に言う。
喜びを現したい。
あー、やべー。
1年も一緒とか、
俺にとって何よりも幸せなこと。
「また一緒かよ」
「にしても3年間同じとはな」
「切っても切れないな、俺たち」
教室に行くと、
先来ていた輝と力哉がいて。
クラス表でちらっとしか、
確認しなかったけど。
またこいつらと同じ。
ま、俺にとっちゃ最高のことで。
「おー、待たせたな」
右斜め後ろに朱里がいる。
いつぶりかに感じる幸福感。
そんなものを味わっていたせいで、
一気に現実を見た時の
崩壊感が半端ねぇ。
教室のドアが開いて、
入って来た姿。
「今年1年、担任になった関根です」
誰と一緒か夢中になりすぎて、
重要なことを確認し忘れていた。
担任、関根かよ。
「この中で1年で担任した生徒もいるな。な、十夜」
「うっせえ」
「お、朱里もか。うん、よし」
俺らはまじで、
こいつの被害者で。