雨のち晴
「見たそうな顔、してんね」
冷静に言葉を投げかけられた。
「…ん、まぁ」
言葉を濁し、あたしは
俯いたまま肯定を表した。
分かってるよ、と
麗華はあたしの頭を
ポンっと優しく触れる。
「んじゃ、前行きますか」
恵衣の応援もしないとね。
麗華は勢い良く立ち上がり、
あたしもつられるように
立ち上がった。
少し軽い気がしたのは、
十夜が出ると知ったからだろうか。
「位置に着いて…よーい…」
――――パンッ
威勢のいいピストルの音が鳴り、
位置に着いた選手は
一斉に走り出す。
誰もがみな、1番になりたいと
そう願って。
「ほら、次。恵衣だよ」
「ほんとだ…はは、緊張してんね」
恵衣の姿が見え、
それを黙って見ていると
想像を越える動きを見せてくれた。
顔は引きつり、肩が強張っている。
スポーツ万能の恵衣だが、
久々に走るとのことで
きっと緊張してるんだろう。