雨のち晴
「ごめ…んね、」
好きが。
十夜への想いが。
募っていく。
「謝る必要ねぇだろ。親切してんだ、礼が先」
「…ありがと、」
切なさが溢れて。
それと同時に罪悪感も溢れる。
彼女という座は、もう
埋まっているのに。
十夜はあの子を構うよりも先に、
あたしの所に来てくれた。
嬉しいという表現を、
素直に出来ないでいるのは
里菜ちゃんへの後ろめたさだろうか。
「フジ…子、はいねぇな。よし、ここ座れ」
誰もいない空間に、
イスを引く音が響き渡り
あたしをそこに座らせると
十夜はあたしがしたように
ガーゼと消毒液を用意してくれた。
不器用なのか、
何度も何度も床に落として
慌てた様子を見せる。
そんな彼を見て、あたしは
笑ってしまった。
「あはは…、ちょっと、何してんの」
「うるせぇ…、笑うなよ…ったく」
十夜なりに必死になって
くれていることが、
何よりも嬉しくて
何よりも幸せで。
「ほら、足出せ」
あたしは、言われた通りに
怪我をした足を差し出し
されるがままに手当てを受けた。
「っつ…いたぁ、」
「じっとしろ、我慢」
ぐっと下唇を噛み、
痛みを必死に堪える。