雨のち晴










足の痛さも、傷口の痛みも


だんだん増していく。


けれど、十夜が頑張って


手当てをしてくれているから。


あたしだって、我慢出来る。















「…よし、終わり。痛む、よな?」












すごく申し訳なさそうな


表情を浮かべる十夜。


あたしは心配かけまいと、


とびきりの笑顔を見せた。
















「全然!痛くなくなったよ!」













「嘘つけ。じゃ、ここから1人で行け」











十夜はそう言うと、1人背中を向けて


ドアの方へと足を動かしていく。


嘘をついたあたしは、


変な汗が出てしまう。











「…おい、何とか言えよ」
















そんな時。


十夜は苦笑しながら、再び


あたしの方へと戻ってきて。




















「歩けねぇくせに、意地張んな」














からかうように、


あたしの頭を目一杯


くしゃくしゃにした。













「や、ちょっと…!」











「ほら、行くぞ。俺、まだ出るんだよ」













大きな背中が顔を出して。


あたしは甘えて、十夜におぶって


もらうことにした。


顔から火が出そうなくらい


恥ずかしいのだけれど。


今だけ、今だけ。


そう思ったら、案外自分は


正直な人間だと思ったり。






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