雨のち晴
ピストルが胸に響く。
周りからは大きな声援と拍手。
目には十夜だけしか映ってなくて。
頑張ってる姿が忘れられない。
もちろん十夜の色は一着で。
敵だけど、密かに応援していた
ことは誰にも秘密。
「悔しい~っ!!!」
体育祭が終わった放課後。
恵衣は十夜に負けたことを
テントで叫ぶ。
隣で麗華は、延々と聞かされる
嘆きを、はいはいと流している。
「でも藤田はさすがだね。負けなしだよね、あれじゃ」
麗華はわざと十夜を褒め、
悔しがる恵衣の顔を見て楽しんでいる。
ねえ、朱里?と話題を振られたあたしは、
仕方なく恵衣を味方をするはめに。
「んー、でも…そうでもないよ。恵衣の方が…」
すごかったよ?
そう言おうとした口が、
大きな手に包まれた。
「んだと、こら。締めるぞ」
大きな手に包まれたあたしの口も。
鼻も、何もかも。
息をするのを忘れた。