雨のち晴
「本当に大丈夫だから!…だから、」
「うるせぇ。黙って捕まれ」
十夜はそう言うと、
有無を言わさぬ速さであたしを担いだ。
座っていたイスも軽々と持ち上げて。
「あ、藤田。イス持つよ?」
恵衣があたしのイスを持とうと、
十夜に手を伸ばすと。
「お前も一応女だからな。危なっかしい」
そう言って、拒否した。
恵衣は、「一応って何よ!」と
反発してたけど。
やっぱりそれは、十夜の優しさで。
きっとみんなも分かってると思うけど。
たくさん。たくさん。
自慢してやりたくなった。
「おい、フジ子」
教室に向かわず、連れて来られたのは
さっき来た保健室。
念のため、と強制連行。
恵衣と麗華はあたしの鞄を、と
一足先に教室に戻ってくれた。
「あら、藤田くん。…、と、朱里ちゃん?」
「怪我、見てくれ」
あたしをイスの上に下ろし、
自分はその隣にどかっと腰を下ろす。
この距離感が何とも言えなくて。
嬉しいとか、恥ずかしいだけじゃ
収まらない感情で溢れている。