雨のち晴
「あら、捻ったのかしら…、冷やさないとね」
「何で保健医のくせに、保健室にいねぇんだよ」
目の前でフジ子ちゃんと十夜の
言い争いが繰り広げられる。
あたしはそれを見ながら、
くすっと笑ってしまった。
「ごめんね、朱里ちゃん。今冷やすもの持ってくるわね」
フジ子ちゃんは、そう言って
隣の保管室に行くために
鍵を職員室に取りに行った。
急に静かになった保健室だけど、
寂しい感じは全くしなかった。
「十夜、ごめんね?」
「何がだよ」
十夜は少し疲れたのか、
素っ気無く言い返してくる。
壁に寄りかかり、目を瞑っている彼は
やっぱり誰よりもかっこよかった。
「いっぱい迷惑かけて。本当に…、」
「だから。謝罪じゃなくて礼。何回言ったら分かんだよ」
横目であたしを捕らえ、
十夜は呆れた顔を見せる。
「ん。ありがと」
そう言って笑えば、
十夜は小さくふっと笑った。
あたしもそれと同時に笑みが出て。
何だか好きで好きで仕方なくなった。