雨のち晴











その後、戻ってきたフジ子ちゃんに


細かい手当てをしてもらった。












「これで完了。このくらいなら病院は行かなくて大丈夫よ。でも痛くなったら、ちゃんと行ってね?」
















「はーい」













たくさん冷やして、


ぎゅっと固めた足を眺める。


少し腫れてるけど、


明日には歩けそう。






















「藤田くん、寝ちゃってるわ」









「…、ほんとだ」

















規則正しい音が聞こえる。


こくり、こくりとなる感じが


寝ていることを示していた。
















「でも、よかったわね。朱里ちゃん」












「…はい、本当に。怪我までしちゃったけど。嬉しかったな」






















寝ている十夜をじっと見つめる。


怪我して、走って駆けつけてくれた姿も。


意地悪く笑う姿も。


優しく頭を撫でてくれた姿も。


全部全部、愛しい。


でもね、十夜。


苦しいよ。





















「起きないわね、彼」












「…すいません」
















手当てが終わって10分ほど


起きるのを待っていたけど、


一向に起きる気配がない。


痺れを切らしたのか、


フジ子ちゃんは帰る仕度を


始めてしまった。













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