雨のち晴
玄関に行けば、あたしの鞄が
ぽつんと1つ寂しく置いてある。
そしてその上には、白い紙が1枚。
"邪魔者はいない!一緒に帰れっ!"
どう見ても恵衣の字が。
頭の中を洗脳する。
邪魔、者……?
「帰るぞ。靴、履けよ」
「で、でも…。里菜ちゃんは…?」
だって。だって。
いつも一緒に、いるのに。
「知らね。用事があるとかって、メールあった」
「…そ、っか」
邪魔者、って。
そういうことか。
だけどあたし、帰るまで心臓、
……大丈夫かなあ。
「朱里、早くしろ」
すでに外にいる十夜に呼ばれ、
急いで靴を履く。
今日だけ、許してください。
神様、どうか今日だけ。
目を瞑っていて下さい。
明日になったら、また元に戻るから。
今日だけ、今日だけ。
隣を歩かせて下さい。
あたしは、まん丸の大きな満月に
そう祈りながら、帰り道を歩いた。