雨のち晴
「朱里、これ…」
「んじゃ、これ…」
声が重なったかと思えば、
目の前には麗華の手と
十夜の手が見える。
「何よ、藤田」
「いや、別に……」
手の先を見ると、
そこにはいつもあたしが
買うパンがある。
つまり、
かぶったってことで。
「朱里、これでしょ?」
あたしはいつもそのパンしか買わない。
特に理由はないけど、
あえて言えば食わず嫌いてやつ。
「いい…いらない。今日は、我慢する」
先にパンを購入した
2人を引っ張るように
その場を後にした。
「おい」
背後で声がしたけど、
「……、」
あたしはあえて無視をした。