雨のち晴






「朱里ちゃん、電話鳴ってるよ~」





ご飯も食べてお風呂にも入って。


後は寝るだけのあたしは、


洗面所で歯磨き。


そんなあたしに、誰かから電話。





「誰から?」





4つ下の妹、夕里(ユウリ)に


そう訪ねると。





「藤田十夜って書いてあるよ!」






そう返って来て、


口をゆすいでいた水を


思わず飲んでしまいそうになった。


で、電話…?


十夜から?






「夕里、出ちゃうよ~?」





「だめ!貸して!」





あたしは、大人げなく夕里から


携帯を取り上げる。


そして、耳に当てながら


部屋に戻って。






「もしもし」





声が少しだけ震えた。





『ごめん、遅くに』





「ううん、平気。どうしたの?」





何か新鮮。


電話なんて、いつぶりだろう。


メールですらしてないのに。





『朱里のクラス、明日で英語のテスト終わるだろ?』





「うん…、終わるけど?」





『俺ら明後日なんだけど、授業中寝ててノート取ってなくて。貸してくれ』





どうしよう。


耳元で、十夜が囁いてる気がする。








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