雨のち晴
―――――1年生、夏
もうすぐ夏休みに入る頃。
あたしはいつものように、
恵衣と麗華と一緒にいた。
「夏休み、どこ行く?」
「海!絶対行きたいっ!」
夏休みまで、まだ1週間もあるのに、
2人はすでに遊ぶ計画を立てている。
「朱里、夏休み予定ある?」
毎年のことを頭に浮かべた。
夏休みは…
「ううん、何も。盆におばあちゃん家、行くくらいかな」
そう言うと、2人は
嬉しそうにまた計画を立て始めた。
「朱里」
2人の会話を黙って聞いていた時のこと。
ふと頭上から声がした。
「へ?」
我ながら気の抜けた返事だな、なんて。
「変な顔」
返事よりも、顔を指摘され
少しむっとするあたし。
「何よ、十夜。用事?」
丁度空いていたあたしの
隣のイスに腰を下ろす十夜。
「藤田も遊ぶ?夏休み」
あっ、と思い出したように
左手の掌を右手でぽんっと叩き、
遊ぶ計画に誘おうとする恵衣。