雨のち晴
遠くに見える。
見覚えのある、人影。
嘘、まじで。
何で、いるの。
「諒司先輩…」
びっくりした。
さすがに驚いた。
偶然?それとも。
ていうか、何で?
発見、って、あたしたちのこと?
「やばい、休みの日に会えた…」
恵衣は、諒司先輩の隣にいる
真太先輩しか見えていない。
その隣には健先輩がいたけど、
裕大先輩はいないみたいで。
「朱里!偶然!」
遠くから叫ぶ、諒司先輩。
ちょっと待って、ここ学校じゃないし。
いや、学校でも恥ずかしいんだけど。
こんな街中、しかも人がたくさんいるのに。
何を考えてるんだ、あの人は。
「行きますか」
麗華の声で歩き出すあたしたち。
恵衣は一足先に走って真太先輩の元に。
麗華と顔を合わせて笑う。
恵衣、本当に好きだったんだな、なんて。
そんなことを考えながら。
「何してるんですか」
諒司先輩に立てつくあたし。
何だろう、違和感。
制服じゃないからかな。
少しだけ、良く見える。
「必然ってやつ?まさか逢えるなんて」
「何してるんですか、って聞いたんですけど?」
「3人でぶらぶらしてたら見つけた。本当それだけ!」
嬉しそうに笑ってるよ、この人。
何でこんなに嬉しそうなの。
意味分かんない。
「今日朱里いつも以上に可愛い。服似合ってる」
何なの、本当。
狂うな、調子が。
いきなりまじめになって、
そんなこと言うんだもんな。
「諒司先輩もイケてますよ」
何か流れでそう言ってみた。
だけなのに、
諒司先輩は。
心底嬉しそうに微笑んだ。