雨のち晴
「え、ちょっと!」
『ごめんね、朱里。また遊ぼ!ね!』
「うん…、分かった」
そう言って電話を切る。
あたしは店を出た後、
トイレに行って来ると
どこかへ行った諒司先輩を
確認して、恵衣に電話した。
なのに先に帰ってって言うし。
麗華からは2人で帰るって
メール入ってるし。
何なの、もう。
「あの子たち、上手くいってるみたいだな」
いつの間にか戻って来てた
諒司先輩がふとそんなことを言う。
「何で知ってるんですか」
「だって俺にも連絡入ってたから」
「あ、なるほどね」
時刻は、もうすでに夕方の4時を回っている。
もう行きたい所もないし。
「帰りましょうか」
そう告げた。
あ~もう。
夏休みに会う予定もなかったのに。
なんて考えていると。
「送ってく」
なんて言われる始末。
「いいですよ、すぐそこだし」
断ってはみたものの、
そんなに簡単にいくわけはなく。
「送るっつったら送る」
諒司先輩は言ったら聞かないから。
あたしは仕方なく
送られることにした。
帰る道中。
何か自然と話題が出て来て。
楽しく話して帰った。
話しながら、やっぱり
悪い人じゃないなと思った。
だって、歩くのだって合わせてくれる。
目を見て話してくれる。
笑ってくれる。
そんな些細なことなんだけど、
彼の人間性を現していると思った。