雨のち晴
10月に入って、制服の衣替え。
夏服から冬服に変わって、
気分も一掃。
あたしの高校の冬服、
可愛いから結構好き。
「もう10月も半ばだね」
「うん。もうすっかり秋だね」
帰りのHR、担任を待つ間、
席に着いて外を眺めながら
そんなことを呟く2人。
「何でそんなしみじみしてるの」
「見て、朱里。紅葉だよ」
「うん…そうだね」
2人は最近幸せだからか、
ぼーっとしてることが多い。
付き合ったとは聞いてないけど、
休みの日とか放課後とか
よく遊んでるみたいだし。
きっと引っ付くのも秒読み
だと思う。
「よし、帰ろっ…」
「高原、お前日誌出してないぞ」
担任に呼び止められ、
はっとする。
そうだ、あたし今日日直だった。
あたしのクラスは、
今日1日の出来事や予定を、
日直が日誌にまとめて提出する。
忘れたことなんてなかったのに、
今日に限って忘れるあたし。
「書いて職員室持って行きます」
「待ってるぞ~」
担任の軽い一言に、
少し腹を立てる。
ちくしょう、見逃してくれよ。
「ごめん。先帰ってて」
「朱里、また明日ね!」
「日誌どんまい!」
手伝おうともせず、
心の友は笑顔で帰って行った。
何だよ、もう。
手伝ってくれてもいいじゃん。
あたしはそんなことを
考えながら、自分の席に戻り
日誌を広げ書き込んでいく。
時間割と授業内容と。
それから朝のお知らせと、
今日1日の感想と反省。
「書けたっと」
あたしは筆箱を鞄にしまうと、
すぐ職員室を目指した。