雨のち晴





先生も先生だよ。


待っててくれればいいのに。


どうせ渡すの先生なんだし。


どうせ職員室でせんべいぼりぼり


食べるだけなんだし。


なんて文句を呟きながら廊下を歩く。


もう少しで階段、って所で。





「朱里」




十夜とばったり会った。


珍しく1人で。





「あ、十夜。まだいたの?」




「お前こそ、何してんの?」




「今日日直でさ。日誌書き忘れちゃって」




そう言って、手に持っていた


日誌を見せる。


すると十夜は少し笑って。





「お前が忘れるとか珍しいな」




そう言った。





「そうなの。いつも忘れないのに」




「少しは否定しろって」




あ、笑ってる。


久しぶりに十夜が笑ってる。


何だかやっぱり、


胸がきゅんってなるな。






「だって本当のことだもーん」



何か嬉しくなって。


言わなくてもいいことを、


言ってしまった。





「十夜も珍しいね、1人だなんて」




「あ…まぁ、な」




いつも一緒にいるね、って。


遠回しに言ったようで。


取り消したいと思った。


だってこの言葉のせいで、


十夜が笑わなくなっちゃったから。





「あ、十夜いたぁ」





そこに来たのは、


十夜の彼女。




「待っててって言ったのに~」





「あ、悪い。忘れてた」





十夜を見つけた時の笑顔が、


あたしがいることを認識したことで


一気に曇る。





「高原さんもいたんだね」




いましたよ。


いたけど、何ですか。


何そのわざとらしい顔。


わざとらしい言葉。


もう全部が、嫌いだ。





< 94 / 281 >

この作品をシェア

pagetop