雨のち晴






「里菜ちゃんも残ってたんだね」





なんて、挑発してしまう。


初めての割には、


上手く挑発出来たと思う。


こっちからしたら。


十夜との2人の時間を


壊されたんだから。


怒ってもいいよね。





「うん、残ってたよ。高原さんには関係ないことなんだけどね?」





だけど、この女は。


挑発し返してきた。


あたしは打つ手がなくて、


あっさり降参。






「そうだね、あたし関係ないね」




「うん、関係なーい。ね、十夜?」





やばい、痛い。


鼻の奥がツーンって、


してきた。





「じ、じゃ…またね」




あたしは急いで階段を駆け下りる。


後ろ髪引かれる思いで。


その場を去った。


階段を降り切った所で、


少し速度を落とす。


戻りたい。


さっきまで2人だった時間に。


その時間が過ぎたら、


またばったり会った時に戻って。


永遠にループすればいい。


毎回同じ会話でもいいから。


永遠に同じでいいから。






「何なのよぉ…」





悔しくて悔しくて仕方ない。


里菜ちゃんになりたい。


でも彼女の容姿に


なりたいんじゃなくて、


あのポジションが欲しい。


彼女になりたい。


じゃないとあたし、


十夜と2人になることも、


彼の腕に触れることも。


出来ないんだもん。





「もう…何で、」





何でこんなに好きなの。


いつの間にかこんなに好きに


なってたの。


苦しいよ、十夜…。





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