【完】あなたが笑うなら、私は嘘をつく
「結婚なんて…嫌だよ。結婚なんかしないで」
「え…由香子?」
「嘘だって…嘘だって言ってよぉ……」
涙が勝手に溢れていた。
どうして?
……どうして?
ヒロにいが分からない時に見せる癖…首を傾けながら、私の腕にそっと触れた。
ヒロにいに触れられるのはいつものことなのに…なのに……。
パチンッ
私は、ヒロにいの手を払っていた。
次の瞬間、ヒロにいの手を払ったはずの手が、誰かに掴まれていた。
「来い!」
私の手を掴んだのは司だった。
司は私をヒロにいの部屋から出して、玄関へと引っ張った。
「っ…イヤ!」
抵抗したけれど司の力は強くて、私は司の後ろを着いていくしかなかった。