【完】あなたが笑うなら、私は嘘をつく
「由香子」
ヒロにいが、私の名前を呼んだ。
「ヒロにい…結婚なんかしないで!私、ヒロにいが好き!」
ヒロにいの少し細めの目が、グッと開くのが分かった。
ヒロにいは何か言いたげに口を少しだけ開いたけれど、キュっと紡いだ。
そして、
「司」
ヒロにいは、私の後ろにいる司を見て、名前を呼んで頷いた。
「由香子。ごめんね」
ヒロにいは困ったように笑うと、振り向いて一人アパートへと帰って行った。