【完】あなたが笑うなら、私は嘘をつく
「……嘘には二つの種類があるって…知ってる?」
司が私の目を塞いだまま、話し始めた。
「二つの種類?」
「そう。相手を不幸にする嘘と、幸せにする嘘」
「幸せにする、嘘?」
「うん」
司は私の目から手を離して、私を振り向かせて見つめた。
「ヒロにいは、今世界で一番幸せだと思う。だけどお前が嘘つかないで、素直に言った言葉で、困ってる」
「……イヤだ」
私は司の真剣な目を見つめながら、フルフルと首を何度も横に振った。
「そうだよな」
司は安心したように微笑むと、ヒロにいがしていたように、私の頭を優しく撫でた。
……司に頭を撫でられたのは…初めてだった。
「ヒロにいのためにも、嘘ついてくれよ」
ヒロにいよりも、ずっと不器用に私の頭を撫でる司の手は、ヒロにいの手よりも小さかったけれど…だけど、とっても安心したんだ。