【完】あなたが笑うなら、私は嘘をつく
「おめでとうございます」
自分の言葉に、チクリチクリと胸が痛んだけれど、ヒロにいの為なら我慢が出来た。
私は顔をあげて満面の笑みを浮かべて、ヒロにいに一歩近づいた。
「あのね、私ね…兄貴がとられちゃうみたいで悔しかったの。ヒロにいは、私にとっては本当の兄貴みたいなもんだったから」
「由香子……」
「もう、ブラコンな妹は卒業するからさ。だから、笑って?」
「……ありがとう」
「由香子ちゃん、ありがとう」
ヒロにいは笑った。
由香子さんも笑った。
私の嘘で笑った。
振り向いた先には、司がいた。
私は司ににっこりと笑って、司の元へと小走りで駆けた。