【完】あなたが笑うなら、私は嘘をつく
「はあ…いったぁ……」
特別教室が並ぶ廊下。
昼休みだけれど、シンとしていて、遠くから微かに聞こえる楽しそうな笑い声だけが響いていた。
水飲み場の鏡で自分の顔を見ると、はっきりと手型がついていた。
「最悪……」
私は頭をガクリと落として、水道の蛇口をひねった。
流れ落ちる水を見つめていると、横からスッと水色のハンカチが伸びてきて、水を染み込ませた。
「司(ツカサ)……」
ハンカチの持ち主は、幼なじみの司だった。
「またかよ、由香子(ユカコ)。ったく…心配して来てみりゃあ予想通りじゃねえかよ」
司は眉間にしわを寄せてフゥとため息をつくと、ハンカチを器用に片手でたたんで、キュッと水を絞った。