【完】あなたが笑うなら、私は嘘をつく
嘘だって…言ってよ
彼がいる場所は、私が住むアパートの隣。
コンコン
「ヒロにい」
私はアパートのドアをノックした。
カチャ
アパートの中から頭をかがめて、長身のヒロにいが顔を出した。
10歳離れたヒロにいは、私にとってはお兄ちゃんみたいな存在で、色々と頼りになる幼なじみの一人だ。
「お前、本当に学校途中で抜け出し…って…ほっぺ、どうかしたのか?」
ヒロにいは、頬をハンカチで押さえていた私を見て、不思議そうに首を捻った。
「見たい?」
「えー…ちょっと怖いな」
ヒロにいはそう言って、苦笑いをした。
「あのね、私ビンタされちゃってさあ…聞いてくれる?」
「……それを話に来たんだろう?あがれよ」
ヒロにいは、玄関から入ってすぐ近くにある自分の部屋の扉を開けて、私を招き入れた。