万華鏡
そう言ってすぐ後悔したのに、謝ることができなくて、そのまま彼は引っ越してしまった。
それから10年経って、やっと謝ることができたと思ったのに、私の前に現れたのは彼の魂で、もうこの世の人ではなかった…。
その時にね、この万華鏡をもらったの。
生前、彼が私のために作ってくれたものよ。本当は彼の家に置いてあったのに、道端に現れて直接渡してくれたの。
不思議でしょ。
彼も私と同じ会社に内定が決まっててね…宮下さんが入社した同じ年に配属される筈だったの…。
すごく辛かった。
誰にも話す気になれなくて…。ずっと黙っててごめんなさい。」
「その彼の事、好きだったの?」
「…多分。でも本当はよくわからない。だって意識する前に引っ越してしまって、その時、私まだ中二よ。」
「そっか。」
「気持ちの整理がついたというか…。もう思い出して泣く事はないから、これからは皆で万華鏡を覗いて楽しめたらな…て。」