万華鏡
「千尋は君によく似てる。だから今度は俺に似た女の子が欲しい。」
「そんな上手くいくかな…。」
「ん。…大丈夫。」
一体何が大丈夫なんだか…。
夫の腕の中、スースーと寝息が聞こえる。
一つだけ言いたくなくて黙ってる事がある。内緒にしてごめんなさい。でもこれだけは言えないの。
結婚式の前夜。
それまで住んでいたマンションを出て実家に戻っていた。
夜10時頃、私は明日に備え、早めに寝ようとしていた。誰かがギシギシと階段を上って来る音がする。その音は部屋の前で止み、コンコンとノックする。
「誰?お母さん?」
「……。」
返事がない。
「どうしたの?明日からいなくなっちゃうから寂しくなった?」
努めて明るく言ってみた。
カチャ…
扉が開いた。