万華鏡
「あれ…理佳子さん。どうしたの慌てて。」
「リ…リョウ君!?あ…ごめん。い…今、男の人に追いかけられて…。」
リョウ君は階段のところや辺りを見てくれたけど、変わった様子はないみたいだった。
「今は大丈夫みたいだけど、一応管理人さんに連絡した方がいいよ。一緒に行こう。」
「あ…ありがと。」
今になって震えがきた。カタカタカタと震える私の背中を擦ってくれるリョウ君。
管理人さんに連絡を入れた後、部屋の前まで送ってくれた。
「ありがとうね、リョウ君。用事があったんじゃないの?ごめんね。付き合わせちゃって…。」
「いや、全然用事なんて…。大丈…。」
その時、リョウ君の部屋の扉が開いて、中から友だちらしき人が出て来た。
「お。何だ、帰ってたのかよ。どこまで行ってんの。遅い…。あれ、お客さん?」
「い…いえ、違います。私、隣の住人で…。ごめんね、リョウ君。ありがと。ま…またね。」
そそくさと自分の部屋に入った。