万華鏡
「宮下さん。今日はもういいわ。新人さんに遅くまでさせられないし。その代わり、明日は頑張ってもらうわよ。」
「はい!すみませんでした。」
ぺこりと頭を下げ、ほっとした表情の彼女を見送った。
さて…、少しだけ入力しておこう。
しん…とした部屋の中。
パソコンをたたくカチャカチャという音しか聞こえない。
しばらく集中していて、人が近付いていたことに気付かなかった。
「今日も残業?」
「ひゃ!びっくりした。関口君か。ちょっとね、誤ってデータを消しちゃって…。」
「またブリちゃん?」
「ブリちゃん…て、宮下さんの事?関口君、その言い方ちょっと酷いんじゃない?」
「ブリちゃんで宮下さんだとわかる谷原さんも同類だと思うけど。」
「ぷっ…はは。本当ね。クスクス。」
「まだ終わらないの?もう9時過ぎたよ。」
「え…もうそんな時間?やだ、全然気付かなかった。もう帰る帰る。」
急いでパソコンを閉じ、帰る用意をした。
「俺ももう帰るし、一緒に行こう。」