万華鏡


「…さん。谷原さん。どうしたんですかぁ。ボーッとしちゃって。お弁当にしましょうよ。」

「あ…ごめん。そうだね。」

部屋の中は私と宮下さんの二人だけで、皆食堂へ行ったみたいだった。

「ねえ、谷原さんてぇ、好きな人いるんですかぁ?」

「な…何?藪から棒に。」

「そんな警戒しないで下さいよぉ。ただどうかなってだけでぇ。」

「好きな人ねぇ。いないかな、今のとこ。」

「えー、勿体なぁい。谷原さんみたいに可愛くて素敵な人、回りがほっとかないと思うんだけど。あ、もしかしたら彼氏がいると思われて、反対に声かけないのかな?」

「さあ、どうなんだろ。でも…。」

「でも?」

「例えば好きな人がいて、その人に気持ちを伝えるのって難しいよね。宮下さんも関口君にそう思ってるんじゃない?」

「そうなんですよねぇ。関口さんてストレートに表現されるの苦手みたいだし。だったらこれからは押せ押せ路線は止めて、引いてみようかと…。」

「そっか。上手く伝わるといいね。」

「はい!でも今、宮下さん"も"、て言いましたよね?ということは谷原さんも?」





< 36 / 108 >

この作品をシェア

pagetop