万華鏡
「あら、分かった?んー昔ね、酷い事言っちゃって謝りたかったのに、謝る前に引っ越した人がいるの。それが今でも気になってて…。」
「初恋の人?」
「初恋…なのかなあ。意識する前にいなくなっちゃったから、今でもよく分からないの。でも、もし今会えたなら謝りたい。きっと深く傷つけたと思うから。」
「あの…上手く言えないんだけどぉ、谷原さんて人との付き合いに一線引いてません?
何だか深く関わりたくないみたいな。
…きっとそれのせいで新しい恋にも踏み切れないんじゃないですかぁ?
その人探し出して謝るべきですよぉ。
だって谷原さんの人生なんだから、自分で切り開かなきゃ誰もしてくれないですよぉ?」
まるで鈍器で殴られたような衝撃だった。
まだ彼女とはそんなに長い付き合いでも、特に仲がいい訳でもない。
なのに意図も簡単に心の底に押し込めてきた思いを言い当てられるなんて…。
本当に彼女の言う通りだ。思い悩むだけでは前に進めない。自分から行動を起こさないと。
でも…本音は怖い。
あの時に嫌われたかもしれない。
今更…と呆れられるかもしれない。
…好きな人がいて、会いに行けば迷惑かも…。