万華鏡
ピロピロピロ…ピロピロピロ…
「あれ、電話だ。ちょっとごめんね。」
関口君に断ってディスプレイを確認するとリョウ君だった。深い溜め息を吐くと、仕方なく通話ボタンを押した。
「…はい。」
『何してんだよ!メールぐらいできるだろ!?今どこだよ!!』
大声に思わず耳から携帯を遠避けた。
何も答えないでいると、
『おい!聞いてるのか!?』
更に荒げた声で言ってくる。
「…そんな大声出さなくても聞こえてるよ。今ね、職場の人と一緒なの。だからそんなに心配しないで。じゃあね。」
一方的に通話を終えると電源を切った。
「…彼氏?」
「ううん。隣の大学生。一度痴漢から助けてもらった事があって…。今週入って残業続きで遅くなったじゃない。また痴漢に会っちゃいけないからって、駅まで迎えに来てくれてたの。今日は来なくていいってメールしたのに、どこで誰と一緒か…てしつこくて。」
「…それ、ストーカー?」