万華鏡
「ふーん。谷原さんでもそんな顔するんだ。」
「え…。どういう意味よ。私が赤くなったらおかしいの?」
「いや。何かね、職場での君はいつも冷静沈着で動じるとこ見たことないし、大人な雰囲気が漂ってるんだけど、今の君はまるで高校生みたいな反応だ。」
「悪かったわね。恋愛に関しては初心者なんですう。いつもの私じゃなくてがっかりしたでしょ。」
プイッとそっぽを向いた。
「これでも誉めてんだぜ。そう怒るなよ。」
「どこが誉めてるっていうのよ。」
「可愛いって言ってんの。」
テーブルに肘をついて上目遣いに睨む私のおでこをつんと突ついた。
その仕草が私の顔を更に赤くした。
「なあ。ちょっとは期待してもいいわけ?」
「…まあ、嫌いじゃないわよ。」
「お、強気な発言。じゃあ来週あたり、映画でも行かないか?」
「来週?…来週は予定があるの。再来週でもいい?」
「随分先の約束だな。まあいいや。忘れるなよ。」
「関口君こそ。」