万華鏡
駅前は結構賑やかで、大型のショッピングセンター、カルチャースクールやオフィスなどが入った大きなビル、高層マンションなどが建ち並んでいる。
タクシー乗り場やバス停を通り越し、大通りに沿って歩いていくと道が二手に別れていた。
そこで地図を確認して右へ曲がった。
…のだけど。
道を一本どこかで間違えたのかと思うほど静かで、民家や個人商店が軒を連ね、大通りの喧騒は全くない。
駅から離れて行くにつれ、田んぼや畑が多くなってきた。
降りた駅から出ているローカル線の電車が一両、ガチャガチャと音を鳴らしながら走って行く。
のんびりとした静かな街だった。
時折、平屋建ての民家の前でお年寄りがベンチに座り、ゆっくりとした口調で談笑している。
どのくらい歩いただろうか。今、自分がいる辺りを地図で確認したけれど…。
あれ?ここはどこだ?
確かさっきはここをこう行ったから、…ん?
立ち止まって地図を回転させながら悩んでいると…。