万華鏡
千尋が小学3年生の夏休み。
私は暑さで宿題もする気になれず、千尋の家に入り浸って暇をもて余していた。
「ねえ、理佳子ちゃん。宿題しないの?」
「暑いもん。」
「でもやらなきゃ困るよ。」
「家にいても勉強しろって煩いからここに来たのに、あんたまで同じ事言うの?」
「だって僕だってやってるんだし、一緒にやろうよ。」
「だってそんな工作の宿題やられちゃ、見てる方が楽しいじゃん。」
「……。」
「ねえ、それちょっと貸して。」
「え…やだよ。これは僕がやるの。」
「いいじゃん。ちょっとだけだから。ね?」
「やだ!」
「何よ!一杯貸してなんて言ってないでしょ。貸しなさいよ!」
段ボールクラフトでカッターナイフを使っていた千尋ともみ合いになり、誤って左手のひらをざっくり切ってしまった。