万華鏡


千尋が小学3年生の夏休み。

私は暑さで宿題もする気になれず、千尋の家に入り浸って暇をもて余していた。

「ねえ、理佳子ちゃん。宿題しないの?」

「暑いもん。」

「でもやらなきゃ困るよ。」

「家にいても勉強しろって煩いからここに来たのに、あんたまで同じ事言うの?」

「だって僕だってやってるんだし、一緒にやろうよ。」

「だってそんな工作の宿題やられちゃ、見てる方が楽しいじゃん。」

「……。」

「ねえ、それちょっと貸して。」

「え…やだよ。これは僕がやるの。」

「いいじゃん。ちょっとだけだから。ね?」

「やだ!」

「何よ!一杯貸してなんて言ってないでしょ。貸しなさいよ!」

段ボールクラフトでカッターナイフを使っていた千尋ともみ合いになり、誤って左手のひらをざっくり切ってしまった。




< 56 / 108 >

この作品をシェア

pagetop