万華鏡
懐かしい思い出と共に、溢れ出す涙。
「千尋…千尋…あ…会いたかっ…。」
言葉が嗚咽に呑み込まれ、言葉が続かない。
千尋の手を握り締め、人通りがないのをいいことに、ボロボロと涙が頬を伝った。
「わ…わー!ちょっとタンマ。俺が泣かしたみたいじゃん。こっち来て。」
泣きながら心の中では、
《あんたが泣かしたんじゃん。》
と突っ込みを入れながら、千尋に手を引かれるがまま路地に入った。
そこを抜けて左に曲がると小さな祠と鳥居があり、その手前の石段に座った。
「ここなら泣いても大丈夫。」
祠の周りは木々が生い茂り、目の前には一面田んぼが広がっている。
人通りは全くない。というより、そこは通りではなく、もはや畦道だった。
田んぼの向こうにはさっきのローカル電車がガチャガチャと通っていくだけ。