万華鏡
2.苦い思い出
私の住んでる家の隣に越してきたのは、千尋の両親だった。まだ新婚の雰囲気が漂う夫婦で、挨拶に来たとき少し膨らんだお腹をしていた。
「初めまして。これからお隣に住むの。仲良くしてね。」
私の両親に挨拶した後、わざわざまだ1歳半だった私にまで挨拶をしたらしい。
それからお隣とは家族ぐるみの付き合いになった。
私は千尋のお母さんが大好きで、次第に大きくなるお腹に不思議さを感じていた。
ある日お腹を触らせてもらった時、ぐにょぐにょと動くのを感じて、不思議そうな顔で千尋のお母さんを見上げた。
「赤ちゃんよ。理佳子ちゃんのお誕生日の頃産まれるの。産まれたら仲良くしてね。」
それからは千尋が産まれるまで毎日お腹を擦りながら声をかけた。
「りかこだよ。」
「あとぼう(遊ぼう)ね。」
「だいしゅき(大好き)。」
そんな言葉の繰り返しだった。